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    ジェフリー・バワ建築のホテルを見るなら南西海岸ははずせない

    スリランカでジェフリー・バワ建築のホテルを見たいなら、南西海岸を旅行日程から外すことはできません。バワの代表作としては、内陸部のヘリタンス・カンダラマが日本でよく知られていますが、海辺のリゾート建築に目を向けると、ワッドゥワ、ベントータ、アフンガラ、ゴールに重要なホテルが続いています。1960年代の初期作品から1990年代の晩年作までを同じ海岸線でたどれるため、1軒の名作を見るだけでは分からない、バワ建築の変化まで読み取れる地域なのです。

    南西海岸のホテルには、海を正面に見せるだけでは終わらない共通点があります。玄関からロビー、回廊、中庭、水盤、階段、プールを経て、最後にインド洋が視界に広がる。屋根の陰、石やタイルの床、風が通る広い空間、庭の樹木までが連続し、建物の内側と外側をはっきり分けません。ホテルに到着して客室で休むだけではなく、館内を歩き、光の向きや海との距離を確かめる時間そのものが、ジェフリー・バワ建築を知る機会になります。


    目次

    南西海岸に名作が集まる

    ジェフリー・バワが海辺のホテルを数多く手掛けた背景には、スリランカの観光開発と南西海岸の関係があります。コロンボからゴールにかけての海岸には、早い時期から海外旅行者を迎えるリゾートが計画されました。バワは西洋式の大型ホテルをそのまま置くのではなく、スリランカの中庭、深い軒、瓦屋根、回廊、植栽、水面を現代のホテルに組み込み、強い日差しと雨、湿度、海風に応じた空間をつくりました。トロピカル・モダニズムと呼ばれる建築は、外観の様式だけを指す言葉ではありません。暑い時間にも陰が保たれ、雨の日にも屋根のある通路を移動でき、開放された場所では風が抜けるように考えられています。

    南西海岸が特別なのは、異なる年代の作品が比較的近い範囲に残っていることです。ベントータ・ビーチ・ホテルの原型が生まれた1960年代、旧トリトン・ホテルが完成した1980年前後、ジェットウィング・ライトハウスとザ・ブルーウォーターが建てられた1990年代では、同じバワ建築でも表情が違います。初期には中庭や伝統的な屋根を強く意識した構成が見られ、晩年になると柱、水盤、直線、広い余白が目立つようになります。南西海岸を北から南へ移動すると、約30年に及ぶホテル建築の変化を、図面や写真ではなく滞在空間の中で確かめられるのです。


    ベントータの原点

    ベントータで最初に見たいのが、現在のシナモン・ベントータ・ビーチです。前身のベントータ・ビーチ・ホテルは1967年に設計が始まり、1969年に完成したバワ初期の代表的なリゾートでした。現在のホテルは大規模な改修を経ていますが、中央の中庭を核とした考え方や、ロビーの芸術作品など、旧ホテルを特徴づけた部分が保存、修復されています。海とベントータ川に挟まれた土地を生かしながら、到着した瞬間にすべての景色を見せず、建物の奥に進むにつれて水辺が現れる構成には、後のバワホテルに続く考え方がすでに表れています。

    ベントータでは、ホテルだけでなくルヌガンガも見ておきたい場所です。バワは1948年に土地を取得し、長い年月をかけて自邸と庭園をつくり続けました。建物を単体で眺める場所ではなく、丘、湖、芝生、樹木、階段、塀、彫刻、遠くの景色が互いに関係する広大な作品です。南西海岸のホテルで見られる、視線を一度遮ってから風景を見せる構成や、庭と建物の境界を薄くする手法は、ルヌガンガを歩くと具体的に分かります。現在はガーデンツアーのほか宿泊も行われており、ベントータに滞在すれば、リゾートホテルとバワ自身の生活空間を同じ地域で見比べられます。


    海と水面のホテル

    アフンガラにあるヘリタンス・アフンガラは、旧トリトン・ホテルとして1979年から1981年にかけて建てられました。ロビーから水盤、プール、インド洋が一直線に重なる眺めで知られ、海辺の景色を建築の軸として扱ったホテルです。水盤の青、プールの青、海の青、空の青が奥行きをつくり、建物の高さを抑えた構成によって、視線は自然に海岸へ向かいます。正面から見ると単純に思える配置ですが、ロビーの陰から明るい水面を見ることで、屋内の涼しさと南国の光が同時に感じられます。バワ建築で繰り返し使われた水面の役割が、はっきりと現れたホテルの1つです。

    ワッドゥワのザ・ブルーウォーターは、1996年から1998年にかけて完成した晩年のホテルで、バワが建設現場を直接確認した最後のホテル作品として知られています。こちらでは伝統的な屋根の存在感よりも、整然と並ぶ柱、淡い色の床と壁、細長い水盤、広い庭、フランジパニの樹木が目に残ります。空間は抑制されており、装飾を増やさず、柱の間隔と水面の反射によって奥行きをつくっています。ヘリタンス・アフンガラとザ・ブルーウォーターを続けて見ると、海を扱う基本は共通しながら、晩年になるほど線と余白が研ぎ澄まされていったことが分かるでしょう。


    ゴールの完成形

    ゴールの北側に建つジェットウィング・ライトハウスは、1995年から1997年にかけてつくられた晩年の代表作です。岩の多い海岸と高低差のある土地を利用し、正面玄関からすぐに海を見せるのではなく、閉じた印象の入口と円形階段を経て、上階でインド洋の景色が大きく現れます。この劇的な構成は、バワが得意とした景色の見せ方を強く感じさせます。ホテル全体は岩、水盤、中庭、階段、テラスが段階的に配置され、海岸の地形に建物を重ねたような設計です。

    入口の円形階段では、芸術家ラキ・セナナヤケが制作した銅と真鍮の人物像が手すりを構成しています。シンハラ軍とポルトガル軍の戦いを題材にした彫刻が階段を囲み、建築の一部として歴史を語ります。バワのホテルでは、建築家1人の作品として完結させず、芸術家、工芸家、染色家らとの共同制作が各所に見られますが、ジェットウィング・ライトハウスは、その特徴が最も明確に残るホテルでしょう。ゴール旧市街の観光と組み合わせられるため、建築だけに日程を限定せず、南西海岸の歴史や海辺の風景まで同じ滞在で味わえます。


    宿泊して見比べる

    ジェフリー・バワ建築のホテルは、短時間の館内見学だけでは十分に分からない部分があります。朝と夕方では水盤に映る光が異なり、日中には深い軒と回廊の陰が際立ちます。雨が降れば瓦屋根や中庭の役割が見え、夜になると照明によって柱や階段の輪郭が現れます。少なくとも1軒には宿泊し、到着時、食事前、早朝に館内を歩く時間を取ると、写真で知られる景色だけではなく、空間の順序や風の通り方まで感じられると思います。

    旅行日程としては、コロンボ方面からワッドゥワ、ベントータ、アフンガラ、ゴールの順に南下すると、ホテルの位置関係が自然にまとまります。すべてのホテルに泊まる必要はなく、ザ・ブルーウォーター、シナモン・ベントータ・ビーチ、ヘリタンス・アフンガラ、ジェットウィング・ライトハウスの中から宿泊先を決め、ベントータではルヌガンガを加える行程が適しています。ホテルによって宿泊者以外の館内利用条件は異なるため、食事やガーデンツアーを含めて事前に予定を決めておくのがよいでしょう。南西海岸には、ジェフリー・バワが海辺のリゾート建築に取り組んだ初期から晩年までの作品が連なっています。バワ建築を見るためのスリランカ旅行なら、この海岸線ははずせない場所なのです。



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