キャンディ滞在では仏歯寺やキャンディ湖、キャンディアンダンスに時間を取る人が多く、郊外にあるペラデニア植物園まで予定に加える人はそれほど多くありません。しかし、ここは花壇を眺めて短時間で終えるような植物園ではなく、約59ヘクタールの敷地に4,000種を超える植物が育つ、スリランカを代表する国立植物園です。ラン、ヤシ、シダ、スパイス、薬用植物、巨大な竹、100年以上を経た大木まで揃い、園内を歩いていると植物園というより、手をかけて守られてきた熱帯の森に近いスケールを感じます。
キャンディの隠れた名所としてペラデニア植物園をすすめたい理由は、その規模だけではありません。キャンディ王国時代の歴史、英国統治時代の植物研究、スリランカの農業と深く関わってきた場所であり、現在も国立植物標本館を併設しています。植物に特別な関心がなくても、ヤシ並木や巨大なベンジャミン、マハウェリ川沿いの景観を見ながら歩くだけで、キャンディ市街とは異なる時間を過ごせます。2~3時間ほど確保して訪れると、この場所が単なる市内観光の追加ではないことが分かると思います。

キャンディ郊外の大庭園
ペラデニア植物園の特徴は、何よりも樹木の大きさです。整然と並ぶ花だけを鑑賞する庭園とは違い、空を覆うほど枝を広げた木々や高さ20mを超えるヤシが続き、その間に広い芝生や花壇が配置されています。中でもグレートローンに立つジャワ・フィグ・ツリーは、ベンジャミンの仲間とは思えないほど巨大で、太い幹から何本もの枝が水平方向に伸び、巨大な傘のように芝生を覆っています。写真では大きさが伝わりにくく、人と一緒に眺めて初めて樹冠の広さが分かる木です。園内には20ヘクタールほどの樹木園もあり、およそ10,000本の木が育ち、その中には樹齢100年を超えるものも残っています。
もうひとつ印象的なのがヤシです。園内には200種を超えるヤシがあり、ロイヤル・パーム・アベニュー、パルミラ・パーム・アベニュー、キャベッジ・パーム・アベニューと、それぞれ姿の異なるヤシ並木を見ることができます。キャベッジパームは高さ21mを超え、一直線に並ぶロイヤルパームもペラデニア植物園を代表する景観です。セーシェル原産のダブルココナッツもあり、植物界最大の種子を実らせる珍しいヤシとして知られています。南国らしい植物園という言葉だけでは収まらず、世界各地の熱帯植物を長い年月をかけて集めてきた場所なのです。

王国時代から続く場所
ペラデニアの歴史は英国統治時代より古く、1371年までさかのぼります。当時のキャンディ地方を治めたウィクラマバーフ3世が、マハウェリ川沿いのペラデニアに宮廷を置いたことが、この土地の歴史の始まりとされています。その後も王家と関係する場所として使われ、18世紀には王室庭園となり、1780年から1798年にはラージャーディ・ラージャシンハ王がここで暮らしました。現在の植物園だけを見ていると英国式庭園の印象が強く残りますが、その土台にはキャンディ王国の長い歴史があります。
現在につながる植物園が整備されたのは1821年です。アレクサンダー・ムーンのもとで植物園の機能がペラデニアに移され、当初はシナモンやコーヒーなどが栽培されました。19世紀半ば以降はスリランカ各地の植物の収集と研究が進み、植物園として国際的にも知られるようになります。その後、経済植物や農業の研究にも役割を広げ、1912年の農業行政の発展にも関係しました。現在の園内にシナモン、コショウ、カルダモン、ナツメグなどを集めたスパイスガーデンがあるのも、単なる展示ではなく、この植物園が農業と植物研究を担ってきた歴史と重なっています。1840年に植えられた古いナツメグも現在まで残っています。

見逃せない園内の景観
園内で時間を取りたい場所のひとつがオーキッドハウスです。カトレア、デンドロビウム、ファレノプシス、バンダなど多様なランが展示され、周辺では熱帯で育つランも見られます。中でもグラマトフィラム・スペキオスムは世界最大級のランとして知られ、花茎が2.5mほどに達することがあります。その近くには約100種のシダを集めたファーナリー、花壇、観葉植物を集めたプラントハウス、800点を超えるサボテン類を展示する施設もあり、ひとつの温室だけを見て終わる構成ではありません。
さらに奥まで歩くと、景観は大きく変わります。ビルマ原産の巨大竹は高さ30~40mに達し、幹の直径も20~25cmほどになるため、日本で見る竹林とはスケールが違います。湖にはパピルスやスイレンが育ち、その先には広い芝生やヤシ並木が続きます。こうした場所を順番に見ていくと、ランや花の展示だけでなく、乾燥地の植物、湿地植物、香辛料、熱帯樹木までひとつの園内で見られることが分かります。ペラデニア植物園では「珍しい花を何種類見たか」より、大木と芝生、並木、川沿いの風景を含めて眺めるほうが、この場所らしさを感じられるでしょう。

半日で組むキャンディ観光
キャンディ観光では、仏歯寺とペラデニア植物園を同じ日に組み合わせる日程が合います。仏歯寺はキャンディ王国の宗教と王権を伝える場所で、ペラデニア植物園は王国時代から植民地期を経て現在まで続く植物と農業の歴史を見せてくれます。同じキャンディにありながら性格はまったく異なり、寺院、市街、湖だけで終わらないキャンディの一面が見えてきます。植物園の主要部分を見るなら2~3時間ほど確保したいところで、植物や写真に関心がある場合は半日程度を予定してもよいでしょう。
キャンディ中心部からはトゥクトゥクまたは車で約20分です。午前に植物園を訪れ、午後からキャンディ市内を観光する日程でもよく、反対に仏歯寺を午前に見てから植物園で午後を過ごす組み方もできます。園内は木陰のある場所が多い一方、グレートローンやヤシ並木など空が大きく開ける場所もあるため、短時間で主要施設だけを見るより、余裕を持って歩いたほうがペラデニアらしい景観を楽しめます。キャンディで2泊するなら、市内観光とは別に数時間を確保しておきたい場所だと思います。

訪問前に知る基本情報
ペラデニア植物園は年間を通して開園しており、2026年8月時点の開園時間は7時30分から18時、チケット販売は17時までです。外国人旅行者の入園料は大人3,540スリランカルピー、学生2,360スリランカルピー、5~12歳の子ども1,770スリランカルピーとなっています。園内のカフェとレストランは8時から17時まで営業しています。料金や時間は変更されることがあるため、旅行時点の最新情報を確認しておくとよいでしょう。
キャンディの隠れた名所としてペラデニア植物園を挙げるのは、知名度の低い場所だからではありません。スリランカ国内では長く親しまれ、国を代表する植物園として位置づけられている一方、日本からの短い観光日程では仏歯寺やシギリヤ、紅茶列車などが優先され、ここに2~3時間を確保する機会が少ないからです。王国時代の土地に200年以上続く植物園があり、4,000種を超える植物と巨大な樹木、ヤシ並木、ラン、スパイスまで見られる場所は、キャンディ周辺でも独特です。スリランカ旅行の日程にキャンディを組み込むなら、ペラデニア植物園まで含めて考えることで、この高原都市の見え方は大きく広がると思います。


